それはすべてのものに「陰」と「陽」があるという考え方ですね。
陰性は「拡散していく遠心的なエナルギー」「冷たい」「長い」「細い」「水分が多い」「紫」「甘い」「酸っぱい」「辛い」「女」「カリウム」などで
陽性は「収縮していく求心的なエネルギー」「熱い」「短い」「太い」「水分が少ない」「赤」「苦い」「塩からい」「男」「ナトリウム」などを判断基準としています。
陰陽はとても重要なことなんです。でも、何でもかんでも陰陽で、それも現象面だけを見て、すべての事象を判断するのは無理があるんですね。
水は陰性と言われていますよね。でも、本当に陰性だと思いますか?
そして、この水を温めてお湯にして飲んだら陰性ではない。本当にそうだと思いますか?
水というのは、あらゆる生物にとって最も基本的で重要な栄養素です。そして、すべての生命現象の中心である水そのものは中庸なんです。
水分が上手くコントロールできない人が、体の冷えている真冬の夜に、水を飲むと血液の流れが良くなると思って、飲みたくないのに無理に飲む。そんなことしていれば、体は弱って冷えるし、体がだぶついてくれば、むくみが生じてきたりします。この体がむくんだり、血圧が低下したり、冷えたりすることは、陰性の現象だといわれます。だから、水を摂りすぎると陰性の現象が起こるから陰性だ!というのは、あまりにも単純な判断すぎますよね。体に水分が不足して、それを補給するために水を飲んだ場合は、水を飲んでも陰性の現象は一切起こりません。体が要求してないのに、それを上回る位の大量の水を飲んだ時に、水分の代謝が低下して循環が悪くなり冷えるということだけです。
パンは陰性、陽性どちらだと思いますか?パンは陰性だと言われていますが、根拠は膨らむからです。でも、膨らんでいるのはパンを作っている小麦粉の分子が膨らんでいるわけじゃないですよね。中で微生物が繁殖するときに二酸化酸素が出来る。それは気体ですね。その結果、膨らんでいるのであって、もともと素材そのものが膨らんでいるわけではないです。だから、膨らんでいるから陰性だというのはどうかと思いませんか?
しかし、パンは高温で焼くから陽性だという人もいますよね。高温で焼くと何で陽性になるんでしょうね?
野菜を生で食べると陰性の影響を受けますが、漬けて食べるとかなりバランスが取れますね。でも、漬けたものをさらに焼いて食べるともっと陽性の方向に行くと言われますが・・・
焼くと陽性になるのはどうしてかというと、高温を加えると、陰性の成分が分解しやすいのです。分解された結果、相対的に陽性の成分が増える。だから、焼くと陽性になるという現象はある。しかし、パンを焼くのはそんなに高温ではないし、何時間も焼いたりするわけではないので、そんなに陽性になるのかなぁ?と思うのですが。
何故、見方によって陰陽の判断が違ってくると思いますか?
それは、表面の現象だけを見るからですよね。食べ物ならまだいいですけど、人間そのものを、それも一部の現象だけ見て陰か陽かを見るなんて。そんな簡単なものではないですね。どんな人でも陰性の要素と陽性の要素を両方持っています。
昔の人は体質が非常にシンプルで分かりやすかった。戦前、戦後位に多かったのが結核ですが、結核になる人は典型的な陰性体質の人が多かったから、ほとんど陰性だといっても外れなかった。そして、昔は8割以上が陰性の病気だったので、やたら陽性にすれば一時的には健康になっていたのです。ところが、現代人は陰陽が混在しています。そんなに単純に陰だ、陽だというような人はいないです。だから、表面の現象だけ見て判断するのは危険だということを知っておいてくださいね。
では、その陰陽とはいったい何なのでしょうか?
陰陽は、もともと植物や、人体や、この世のものを構成する基本的元素によって大きく左右されます。その元素によって作られた有機物などは、一時的な現象は起こしますが、永続的ではないんです。
例えば、今ブームの生姜ですが、生姜は体を温めると言われていますよね。しかし、生姜をそのまま生で摂れば、一時的には体を温めますが、その後は冷やす成分が優位に働き、体は逆に冷えてしまいますよ。ところが、これをある程度スライスして天日にしっかり当てて乾燥させたものだと、体を直ぐに温めて、それをずっと長い時間持続させます。何故そういう差がでるかというと、日光に当てることによって有機物が相当変化します。そして、最終的に残るのが無機質です。無機質は全然変化せずに残るんです。その無機質の作用によって体に影響を与えることが多いです。
無機質はミネラルのことですね。このミネラルは108種類あります。最近になって1つ増えたんですよ。この無機質の陰陽の代表的なものが「ナトリウム」と「カリウム」ということになるのですが、そうは、簡単に陰陽を判断できないところがあるのです。というのは、人間の体にはたくさんの細胞があります。そして、それぞれの細胞は結合織で繋がっています。その周辺を流れているのが外液で、細胞内には内液がたっぷりあります。内液にはカリウムがたくさん含まれています。外液にはナトリウムがたくさん含まれています。そこに流れている外液の中にカリウムが多くなってくると、カリウムが細胞内に吸収されます。そして、カリウムの濃度が濃くなると、バランスを取るために水分をどんどん入れて細胞が拡張していきます。逆にナトリウムが多いと、外液の濃度のバランスを取るために、薄めて一定の濃度にしなくてはいけないので、水分を外に出していき細胞は収縮していきます。周辺の細胞も同じことが起こってくるので組織全体は収縮する。それが血管の壁で起これば血管が収縮して圧力がかかる。だから、血圧が上がるのです。これが一時的に起こる現象です。
そして、長い間、細胞の外液にナトリウムが多い状態が続くと、知らないうちに水分をたくさん摂るんです。そうすると細胞の外液の方に水分がどんどん増えてしまいます。外液に水分が増えるのは、濃度のバランスを取るために増えるのです。そうすると、体の中の組織も、外の方の皮膚に近い組織も同じことが起こってきます。ということは、組織が伸びてくるんですね。これは細胞が伸びているのではなく、細胞の間が伸びて、そこに水がたくさん溜まってくるわけです。さらにエスカレートすると、体のあちこちに過剰な水分が溜まりむくみになりますね。でも、ナトリウムは陽性の代表ですよね。その陽性の代表のナトリウムをたくさん摂り続けて体がむくんでしまうんですね。
とこらが、血管は収縮しているから血圧は上がってくる。血圧が上がって、体はむくんできている。そのむくみのせいで、血圧が上がっても血管が圧迫され、抹消の血液の循環が悪くなり、手足が冷えてくる。
さて、これを陰と陽とどちらと判断するか?普通に表面だけを見ると陰性だと判断するでしょうね。体はむくんでいる、表面が冷えてくる、自覚症状もあり、手足が冷えてくる。この現象を見ると陰性だと思いますよね。ところが、典型的な陽性の強いナトリウムの過剰でこの現象が起こるわけですよ。恐ろしいのは、ここで陰性と判断してしまい、益々陽性のこのナトリウムをどんどん入れていこうとすれば、さらに悪化してしまいます。そして、やがて腎臓にも起こってきて腎炎を起こす。ここで、長年砂糖を取り続けている人は、血管が脆くなっているので、その状態で腎炎を起こすと、腎臓からレニンというホルモン用の物質が出てきて益々血管が収縮してしまう。そうすると益々血圧がどんどん上がっていき、血管の切れやすい目の奥の膜と脳が切れてしまう事になる。切れたら大変な事になってしまいますよ。
だから、表面の現象だけを見て陰陽を判断すると、陽性が原因のむくみと冷えを陰性と判断してしまうことになってしまいます。誤った判断で陽性のものを摂りすぎてしまうと、そういう危険なことが起こってくる可能性もあるんです。
アルコールや香辛料を体に入れると体が温まり発汗しますよね。この現象は、一見陽に見えますが、陰性の作用によって血管が拡張し、血流が一時的に活発になって温まるだけで、陰性の成分が中和されて減少していけば、逆に冷えていきます。それが本質の作用ですね。
一時的な表面だけの現象で陰陽を判断するのではなく、常に本質を見極めていかなくてはいけないですね。